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妊婦さん応援プログラム②

今日は、歯周病と早産・低体重児出産との関係の変化を考察します。

【1940年代〜】
妊婦において歯肉炎の症状が顕著になる事実が学術的に確立されました。
学術誌で妊娠性歯肉炎の存在について報告されるようになりました。LoeとSilness(1963年)は、妊娠と歯肉変化との関係を歯周病学的パラメータを用いて、妊娠2か月から8カ月で最大になることを示しました。


【1996年】
歯周炎患者である妊婦は早産•低体重児出産のリスクが高いことが報告されました。
アメリカのOffenbacherら(1996年)は、観察研究により、歯周炎に罹患した妊婦では、そうでない場合よりも低体重児出産のリスクが7.5倍(オッズ比)高いことを報告しました。


【2002〜2003年】
妊婦の歯周炎を治療することにより、早産・低体重児出産のリスクを減少させることを示唆する介入研究の結果が報告されました。
チリのLopezら(2002年)は、歯周疾患をもつ妊婦400名のうち200名には妊娠28週以内に歯周治療を行い、出産前に治療が行われなかった対照群と比較して、早産•低体重児出産の確率が低くなった結果を報告しました。さらに、アメリカにおける研究ではJeffcoat(2003年)も同様の結果を報告しました。


【2006年〜】
妊婦に歯周治療を行なっても早産•低体重児出産のリスクを減少させることができないことを示す介入結果が報告された。
アメリカで行われたMichalowiczら(2006年)による大規模な介入研究において、妊婦における歯周治療は安全に行えるが、早産•低体重児出産のリスクを減らすことはできなかった結果が報告されました。また、Offenbacherら(2009年)、Oliveiraら(2011年)も同様の結果を示しました。


【2013年〜現在】
エビデンスが蓄積し、コンセンサス会議やシステマティックレビューにより歯周病と早産•低体重児出産との関係が疑問視されました。
ヨーロッパ歯周病学会(EFP)とアメリカ歯周病学会(AAP)による合同ワークショップにおけるコンセンサスレポート(Sanzら、2013年)によれば、歯周治療により早産•低体重児出産の全体的な確率を減らすことができないと結論づけられました。コクランのシステマティックレビュー(以下SR)では(Iheozor-Ejoforら、2017年)、妊娠中の歯周治療が早産・低体重児出産の発生率に影響するかは明らかではなく、低体重児出産を減らせるというエビデンスの質は低いと結論づけられました。さらに、Rangel-Rinconら(2018年)のアンブレラレビュー*でも、歯周治療の影響は明らかでないとされました。

      日本歯科大学生命歯学部 歯周病学講座
          准教授•歯科医師  関野 愉

※アンブレラレビューとは?
複数のメタ分析やSRをさらに分析したもので、研究量が増え、精査を高めるために登場しました。

以上のことから、現状では、妊娠中の歯周治療が早産・低体重児出産のリスクを減らせることは証明できていないと言えます。

患者さんへの説明用として苦労して作った資料があるけど、訂正削除しなきゃ!

応援のつもりが、残念なお知らせ(?)になっちゃいましたね💧

でも、勉強になったでしよ?

by tsukidate-dc | 2020-02-18 22:07 | 歯科関連 | Trackback | Comments(0)  

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