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PMTCを行わない理由(最終話)

僕がPMTCを行わない理由の最終話です。

改めて、アクセルソン先生の定義と日本の解釈との違いについて考察します。

ペールアクセルソン先生の定義
「予防歯科看護師、歯科衛生士、歯科医師のような特別な訓練を受けた専門家により、器具フッ化物入りペーストを用いて、すべての歯面の歯肉縁上および縁下1〜3mmのプラークを機械的に選択除去する方法」

厚生労働省管轄e-ヘルスネットの解説
歯科医院で行なわれる専門家による徹底した歯面清掃をPMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)といいます。専用の機器とフッ化物入り研磨剤を使用して、歯みがきで落とせない歯石や磨き残したプラークを中心に総ての歯面の清掃と研磨を行ない、齲蝕や歯周病になりにくい環境を整えます。

この中での共通点として、『専用の器具』があります。日本で紹介されている、あらゆるPMTCの説明でも専用の、専門の、特殊な医療器具というように曖昧な表現がされています。

実はアクセルソン先生の言う『専用の器具』とは、アクセルソン先生ご自身が開発したエバシステム(デンタータス社)を指します。因みにエバとはアクセルソン先生の愛娘の名前が由来だそうです。

一方、日本で紹介されている『専用の器具』とは、そのほとんどが、ラバーカップやラバーチップを代表とする回転器具を指しているのが現状です。

ですから、「当院ではPMTCを行なっています」と紹介する歯科医院がエバシステムを使用していない場合、それはPMTCではありません

PMTC=回転器具を用いた歯面清掃ではないという事です。

さらに、「PMTCは予防治療なので保険適応外となり自費になります」とする医院も少なくありませんが(3000〜5000円が一般的)、アクセルソン先生は「PMTCには歯石除去や深い歯肉縁下プラークの除去が含まれ、これをスケーリングと呼ぶ」と、記載しています。広義ではスケーリングが含まれています。

因みにスケーリングは保険適応です。

中には「PMTCはエビデンスがあります」と、その根拠にまで言及しているものもありましたが、解釈がそもそも間違っている場合も見受けられました。

実はPMTCという用語は商業的な意味合いが強く、本来は学術用語ではありません。実際、Pub Medの検索でもわずかにしかヒットしません。

しかし、PTC(Professional tooth cleaning)で検索すると、相当数の文献がヒットします。このPTCの効果と混同して引用しているものもあったので注意が必要です。

※PTCについては後程ご紹介します。

実はリンデ教授やアクセルソン先生がカールスタッドで行った研究には後日談があります。

この研究から数年後、関連する数々の研究から、カールスタッドでの研究結果が良好だった理由は、磨いて貰った事ではなく、定期的に歯科衛生士に診てもらう事によって、子供達自身が歯に関心を持つようになった事が大きかったのだとわかりました。

自分の口がどうなっているのかを知るチャンスの方が重要なのです。子供達が関心を持った事で、セルフコントロールが上達した事もわかり、さらにはこの研究で使用したフッ素が虫歯予防に役立っている事も明らかになりました。

1980年代後半にはスウェーデンでは回転器具によるPMTCは、長期間繰り返し行うと歯や歯肉を損傷する可能性が高いという見地から、ほとんど消滅しました。
※スウェーデンでのPMTCも現在は進化を遂げています。


言い方は乱暴になるかも知れませんが、僕の目には日本で行われているPMTCは、本来のPMTCとは似て非なるものなのです。

中国のミッキーマウス(偽物)を見た時に(PMTCの現状)思い出してしまいます。

現地では、それはそれで成り立っているのでしょうが、本物を知っている人からすると違和感がありますよね?

僕がPMTCを行わない理由は、いわゆる日本で認識されているPMTCは行なっていません。という事でした。
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2013年 スウェーデン (アクセルソン先生と)

by tsukidate-dc | 2020-02-02 23:58 | Dr.勇樹 | Trackback | Comments(0)  

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