スタッフの写真掲載と毒舌ブログの時だけ閲覧数がバズる事に少々戸惑っている築舘です。
本日は平成28年歯科疾患実態調査結果について考えてみます。
※歯科疾患実態調査とは厚生労働省がわが国の歯科保健状況を把握し、歯科口腔保健の推進に関する基本的事項及び健康日本21において設定した目標の評価等、今後の歯科保健医療対策を推進するための基礎資料を得る事を目的としています。
難しく記載してますが、要は国民の口の中の状態を国が把握しますよ!って事です。
既に3年前のデータですので、今さら感はありますが日々の臨床で思う事とリンクする部分が多々ございますので、
約20年歯周治療に携わった私の独自目線で、調査結果データを考察してみたいと思います。
※今回は歯周領域限定のデータのみ抜粋しました。
まずはこちら、8020運動達成率のデータです。
※8020運動とは、1989年より、当時の厚生省と日本歯科医師会が推進する「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という運動です。ちなみに、我等が世界に誇る岡本先生が行った疫学研究、いわゆる牛久スタディーが、この運動の大きな原動力になったとも言われています。
こちらのデータを見ると、どの年代でも年々、歯が20本以上残っている割合が増加傾向にある事が分かります。平成28年の8020達成率は75歳以上85歳未満の推計で51.2%と、前回調査の40.2%から増加しております。
次に。
年齢階級別の
歯肉出血を有する者の割合データです。こちらは個別に考察してみましょう。どういった診査を行ったかは不明なので、あくまでも当院で行なっている歯周精密検査を行なっていると仮定して、考察してみます。
このデータを見ると、85歳以上の出血有りが有意に低くなっています。ただ、出血無しとの割合だけでみると、他の年代と同様に約半々の割合ですね。この結果から考察すると、85歳以上では、対象歯が既に抜歯されている割合も高くなっている事から、手入れしやすい歯が残っている為、歯肉炎の割合が減少している可能性が高いということ。検査法にもよりますが、高齢になるにつれ歯周ポケットの深さは増加傾向にある事から、6mm以上の歯周ポケットを有する割合が多い場合等は歯肉からの出血は確認出来ない場合もありますし、肉眼で確認出来るまでのタイムラグもある為、診査エラーも考えられます。
いずれにせよ、歯肉出血は若年層で割合が高くなっており、高齢層では歯肉出血が少なく、対象歯がない(既に抜歯されている)割合が増加している事が分かります。
長くなり過ぎるので少し端折ります。
こちらのデータは1人平均喪失歯の年次推移です。
全ての年代で減少傾向にあります。これは、失った歯の割合減少なので、残存する歯の本数が年々増えてきていると言えます。
次に4mm以上の歯周ポケットを有する者の年齢階級別の割合です。このデータから高齢になるにつれ割合が増加している事が分かります。年次推移でもほぼ全ての年代で高値を示しているのが分かります。
こちらは歯磨き頻度のデータです。毎日1回は歯磨きしている者の総数を見てみると、平成23年の95.5%からわずかに下がるものの、95.3%とものすごく高値を示しております。毎日2回以上磨く者の割合は増加を続け、実に77%に達しています。このデータは予防先進国のスウェーデンに勝るとも劣らない結果です。
ではこれらのデータから何が読み取れるのでしょうか?
まず、ひと昔前に比べると “簡単”に抜いてしまう歯科医は減ったと言えると思います。
単純に歯が残ったから、歯周病が増えたんだと結論付けてしまうと、それで終わってしまいます。
歯科医師が抜かなかったは良いものの、残した歯の歯周病の悪化や進行に対して対応出来ていないとも読み取れます。他のデータから考察するに、根分岐部病変への対策や根面齲蝕等への対応も不十分でしょうな。
他方、患者さんの口腔健康に対する意識は高まる一方で世界的にも高水準の歯ブラシ頻度です。という事は患者さんは磨けているかは別として、磨いているのは磨いているという事です。にも関わらず、歯周病罹患率は高いのは何故でしょう。
これは患者さんを上手に導く事が出来ていない歯科衛生士の役不足と言わざるを得ません。
という事で、どうやら今回の調査結果からも、日本の歯科医師、歯科衛生士の無能さが露呈してしまったようです。
患者さんは悪くありません。私も含め同業の皆様、歯科衛生士様、ここから巻き返しましょう!